不良少年サエキ君の災難。 ※ちょい出しサンプル





※こちらを読み進める前に、まずはNOVELSページにあります「災難の始まり」からお読み下さい。



『災難レベル:★』『災難レベル:★★』『災難レベル:★★★』


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(1)『災難レベル:★』



「和馬、ちょっとこっち来て」

昼休み。
友人と学食に行こうとしたら春平に呼び止められた。

「なんだよ、その顔は」

つい、表情に出てしまっていた。

「ゴメン、だって今日弁当持ってきてないから」

つまり早く学食に行かないと、お昼を食べ損ねてしまう。
プラス、昼休みまで春平のお守りはしたくない――実のところこちらが本音だ。

あんなことがあってから一週間。
春平の知らなかった一面をまざまざと見せつけられ、正直どんな風に向き合っていいか今さらに考えてしまう。

春平だけじゃない。
佐伯とだって。

いや、むしろ佐伯の方が問題だ。
お互い気まずいのが分かっていても、同じクラスだから毎日顔を合わせることになるし………・

(はぁ…………)

これを考え出すとたまらなく憂鬱になる。
春平とはできるだけ距離を置きたい。
だからわざと弁当を持ってこなかったのに、僕のささやかな抵抗はさっそく失敗してしまったようだ。

「大丈夫、和馬の分もちゃんと用意してあるから」

「え?」

紙袋を差し出される。
中を見ると、デパートで売っていそうな高級サンドイッチとカツ丼が三つずつ入っていた。

――これだから、お坊ちゃまは。

サンドイッチとカツ丼って、標準体重の僕たちが両方も食べられるわけないじゃないか。

…………ん? ちょっと待てよ。
三つずつ?
一人分多い…………どうして?

しかしそれを訊ねる前に、

「行くぞ、ほら早くついて来いよ」

紙袋を僕に押しつけて足早に歩き始める。
こうなったらもうついて行くしかないので、僕は一緒に学食にいくはずだった友人――藤沢綱吉(ふじさわつなよし)に断りを入れて春平の後を追った。


到着した先は、別棟にある3階と4階の踊り場。
一般教室や学食からも離れているし、昼休みにわざわざこんな所まで来る物好きな生徒なんて僕らくらいだ。
と思っていたら、僕たちよりも先に踊り場に来ていた人物がいた。
佐伯だ。

僕は反射的に春平を見た。
まさか、ここ(学校)でも、この前のようなことを強要する気じゃないだろうな。
この一週間、封印していた映像が生々しくよみがえる。


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(2)



「オレの言った通りにしてきた?」

「…………ああ」

ちらっと僕の方を見て、言葉少な目にそう答えた佐伯の顔が見る見るうちに赤く染まる。

(オレの言った通りにって…………)

はっきり言ってイヤな予感しかしない。
頼むから僕を巻き込まないでくれ!
心の中で訴える。
でも、そう思う反面で佐伯のことが気にかかるのも事実だった。

「証拠のアレ、見せろよ」

春平の言葉を受けて、佐伯がイヤそうに顔をしかめながらも拳を前に出してくる。
そしてその指をゆっくりと開いた。

(ん? なんだアレは………?)

何かグチャッとしたものが見えるけれど、それが何かまでは分からない。
のぞき込むように、僕の体は自然と前のめりになっていた。

「コンドームだよ」

春平が言った。

「しかも、佐伯のセーエキ入り」

「ええっ!」

確かに、注意して見てみるとゴムのようだ。
中が零れ出ないように、口の部分をしっかりと括ってある。
コンドーム――生でこれを見たのは初めてだった。

「さっき四時間目の自習の時に、女子トイレでオナって来いって命令しておいたんだ」

言われてみれば、自習時間佐伯はずっといなかったように思う。

「証拠写真もちゃんと撮ってきただろうな」

色濃い葛藤の表情を見せながら、佐伯が自分のスマホを手渡す。
それを見た春平が、「ぷはっ!」と吹き出した。
それから僕の方に画面を向けてきて、

「見ろよコレ、ちょー笑える」

便器に座り、ゴムを装着したペニスを握っているところが自撮りされていた。
バックに映っているタイルが薄っすらとピンク色をしているから、これは間違いなく女子トイレで撮られたものだ。

授業中とはいえ、いつ誰が入ってくるともしれない女子トイレに入って自慰行為をするなんて、どんな気持ちだっただろう。
僕ならとても集中できそうにない。


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(3)



「で、今日のオカズは何だったんだよ」

意地の悪い顔をして春平が問う。

「まさか女子トイレってだけで興奮してイッたとか?」

「違う! オレはそんな変態じゃない!」

「ふ〜ん、この前散々オレにイカされまくったヤツがよくゆーよ、な、和馬?」

「…………もういいだろ、佐伯はお前の指示に従ったみたいだし………せっかくの弁当、食べる時間なくなるぞ」

「なんだよ、ノリが悪いな」

「腹減ってんだよ。コレ、残り一つは佐伯の分なんだろ?」

僕は手にしていた紙袋を上げて見せる。
こんなムチャなことを要求しておきながら、一方で辱めを与えている相手の昼食まで用意してあるなんて。
色んな意味でズレまくっている。
やはり春平は根っからのお坊ちゃんだ。
おまけに空気の読めない世間知らずで、自分でブレーキを踏むことも知らない。
そして、

「早くオカズの内容を教えろよ。オレと和馬の昼休みがなくなるだろ」

僕の話なんてちっとも聞いちゃいない。
暴君もいいところだ。

…………にしても、春平はどうしてこうも佐伯のオカズの内容なんて知りたがるんだ?

確かこの前も同じことを聞いていたし。
ひょっとして、佐伯に嫉妬している?

家柄を抜きにしたら、春平が佐伯に勝っているところなんて一つもない。
まあ、それはまんま僕にも当てはまることだけど。
昔イジメられていたことに対する恨みや復讐心に思春期特有の嫉妬心があいまって、ドス黒い執着に変貌してしまったとか?

…………ヤバイな、十分あり得そうだ。

僕の目から見たら、被害者は明らかに佐伯の方だ。


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(4)



「………ネット動画」

褐色の肌を薄っすらと赤く染めながら、佐伯が恥ずかしそうに答える。
ギリ聞こえるくらいの大きさだった。

しかし春平はわざとらしく、

「なに? 聞こえなかった、もう一度言って」

「――ッ、ネット動画を思い出しながらした………く、クソッ、これでいいだろ!」

「ネット動画って、確かこの前もそう言ったよな」

「お、同じだっていいだろ」

「タイトルは? そのホームページのアドレス教えてよ」

「………断る」

「なんで? オレや和馬に見られるのが恥ずかしいから? イキ顔までさらしたくせに今さらじゃん」

「クッ」

「もしかして、乳首ピアスとかアナルプレイとか超マニアックな内容だったりして。だから言えないんだ?」

「……………………」

「ま、いいや、お前が黙っててもこっちがその気になればいつでも調べられるし」

――そう、この地域を牛耳っている「金城グループ」の跡取りに不可能なことなんてない。

「これはもういいだろ!」

佐伯がキッと強い眼差しを向けてきた。
そして手にしていたコンドームを取り出したペーパーでくるもうとする。
処分する時のことを考えて、トイレットペーパーを折りたたんで持って来ていたのだろう。

「いいよ、そんなことしなくても。ちょっとオレに貸して」

春平が公害物にでも触れるような手つきで、ゴムの端をつまみ上げる。
今度は何を考えているんだ?
僕がそう思った次の瞬間だった。
信じられなかった。
春平が踊り場の窓からそれをひょいと投げ捨てていた。


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(5)



「「あっ!」」

僕と佐伯の声が反響する。
そして同時に駆け寄り、同時に首を伸ばして窓の下を見た。

――ヨカッタ、誰もいない。

「勝手に拾いに行ったりしたら許さないからな」

「春平、お前何考えてんだよ!」

流石に黙っていられなくなって、僕は声に力をこめる。
もしも下に誰かいたらどうなっていたか。
直接的には関係のない僕ですら肝が冷えた。
当事者である佐伯はというと、

「……………………」

………かわいそうに、完全に表情が凍りついてしまっている。

「怒るなよ和馬。ちょっとした遊びじゃないか」

「お前のは度が過ぎるんだよ! もし下に誰かいたら、遊びじゃ通らないことくらい分かるだろ」

「はいはい、今のはオレが悪かった、ちょっと軽率だったって認めるよ。けどまだ終わりじゃないから」

「は?」

「放課後になったら美化委員が下の花壇に水をやりにくる。だからアレが見つかるのは時間の問題ってわけ。はははっ、明日学校に来るのが楽しみだなぁ」







――翌日。

春平の思惑通り、花壇に落ちていた精液入りのコンドームのことが学校中で話題になっていた。
しかも――

学校でマジ出しするなんて、余程の変態か露出狂なんじゃないか、とか、
一度に出すにしては、かなり量が多く、匂いも相当強かったらしいとか、
実はこれが初めてじゃなくって、あの花壇の花はセーエキを栄養にしてあそこまで育ったとかとか、

時間が経つにつれて好き勝手脚色されまくり、当然のように僕のクラスでもこの話題で盛り上がった。


昼休みの終わりを告げる予鈴がなった。
僕は一番後ろの窓際の席に座っている佐伯を見た。
休み時間も今もずっと下を向いたままだから、その表情は見えない。
だけど、佐伯の気持ちが痛いほど伝わってきて僕の胸が締め付けられる。

次に春平に視線を移した。
姿勢よく正面を向いている。

しかし、その股間はかすかに盛り上がり、目許には愉悦が滲んでいたのを僕は見てしまっていた。


『災難レベル:★』終わり

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※ページ数、価格ともに未定。


Update:2017年4月27日



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